2次関数で一輪挿しをつくりました。
唐突ですが、2次関数とは、中学生で誰もが習うアレです。このフレーズは、あまりいい印象がないかもですが、一方で、噴水が描く軌跡が放物線・・・すなわち2次関数です。美しいですよね。
2次関数とは美しいモノ・・・らしいです。そこで
2次関数をモチーフに一輪挿しを、3Dプリンターで作ってみました。
この一輪挿しのどこら辺が2次関数か説明します。
・断面の拡がり具合が2次関数
・ひねりの角度が2次関数
・断面の層の高さが2次関数
です!
この一輪挿しは、外側の断面が8角形になっていて、それが7層重なって、ひねりながら積み上がっている形をしています。8角形は正8角形ではなく、四角形を面取りしたような形になっていて、長い辺と短い辺がありますが、その2辺の幅を、1層目が4cmで、7層目が6cmとして決めました。こういう寸法を決めるとき、指で、このくらいと決めてみて、その大きさをノギスで測って決めています。1層目と7層目の間を、2次関数に載るように寸法を決めていっています。
式で書くと、n層のサイズ ynは
これって、放物線 y = x2 の 0<x<1 の部分を拡大して当てはめているのがわかりますかね?
x = n/6 と置くと、上の式は、
になりまして、さらに変形すると、
となるので、 y = (yn-40)/20 とおけば、y = x2 という放物線の式になっているのがわかります。
同じような感じで、8角形のひねり角度と、各層の高さを決めていきました。
高さは、上に行くほど詰まる感じにしたかったので、2次関数をひっくり返して使いました。
2次関数の一輪挿しの作り方
以下、フリーの3D CADソフト FreeCADを使って2次関数の一輪挿しを作っていった経緯を書いていきます。
一輪挿しのモデルを作るとき、各層の形をスケッチで作成し、スケッチに描いた線(エッジ)から面を貼って形を作る方法にしました。FreeCADでは、スケッチの位置や回転を変更でき、スケッチに含まれる寸法拘束の値も、いちいちスケッチを開くこと無く変更できるので、便利でした。
しかし・・・貼る面の数や、追加するエッジの数が多くて大変でした・・・。シェイプができたら、あとは簡単です。手順は以下のようになります。
1. ベースとなる8角形をXY平面のスケッチに作る。
2. これをコピーして7枚作る
3. サイズ、ひねり角、高さの表から、スケッチを移動、回転、サイズ変更をする
4. 足りないエッジを追加する
5. エッジを元に面を貼る
6. 面からシェルを作る
7. シェルからソリッドを作る
8. スライサーで造形データを作成
9. 3Dプリンターで出力
このような順番で作れます。
1. ベースとなる8角形をスケッチでつくる。
1辺が40mmの正方形を作って、45°の面取りをしたような形にしています。元の正方形は、補助線に切り替えておきます。補助線は、3Dモードにしたときに表示されません。下側の面取りの寸法を入れる代わりにも補助線を使っています。補助線便利すぎ!
スケッチは、単独でも作ることができますが、この後コピーして量産するときに、まとまってると便利なので、ダミーのbody を作って、そこに入れました。
2. これをコピーして7枚作る
スケッチを右クリックして、コピーを選ぶと、下図のようなダイアログが出ますが、XY座標は複製する必要がないので、チェックを外しておきます。
作業エリアで貼り付けを行うと、独立したスケッチができるので、これを body の中に移動しておきます
すると、モデルの構成はこのようになります。
3. サイズ、ひねり角、高さの表から、スケッチを移動、回転、サイズ変更をする
ここで、スケッチを選ぶと、下のプロパティーウィンドウのデータタブにひねり角、高さ、スケッチの縦サイズ、横サイズ、面取りサイズが見られます。ここを数表のとおりに変更することで、スケッチを完成させることができます。
4. 足りないエッジを追加する
ワークベンチをPART に切り替えて、このコマンドで、エッジを追加し面を貼りシェイプを作ってソリッドに変換するところまでできます。もちろん、全部一気にやらなくても、途中で中断可能です。
このコマンドは ”高度な図形作成ユーティリティー” です。このコマンドでは、作業ウィンドウにあるさまざまな要素から、エッジを作ったり、面を貼ったりできます。しかし、元になる要素がないと作れません。それで、さきほど、大量のスケッチをつくりました。
このコマンドを選択すると、左ペインにこのようなメニューが出ます。
やりたいことを選んでから、作業ウィンドウ上の要素を選択して、作成 ボタンを押す という流れになります。若干操作手順がわかりにくいですが、慣れれば面倒ではないです。
今回、XY平面にスケッチを描いたので、縦のエッジがありません。なので、これを追加していきます。
エッジを追加するので、頂点からエッジ を選択して、エッジを追加したい2点を選び、作成ボタンを押します。2点目を選択するときは、コントロールキーを押しながら選択します。
これを繰り返して必要なエッジをすべて作成します。スケッチに描かれているエッジは面を貼るのにも使えますので、追加する必要はありません。
四角形に面を貼ろうとすると、高い確率で、サイケディックな曲面になってしまいますので、平面を貼りたい場合は、三角形にしたほうがよいです。ということで、面が三角形になるようにエッジを追加していきます。
5. エッジを元に面を貼る
つぎに、メニューから、エッジから面へ を選択して、面を構成するエッジを選択して作成ボタンを押します。点やエッジを選択するとき、すでに作成したエッジや面が邪魔をして選びにくいときが間々ありますので、そういうときは、モデルウィンドウから邪魔な面やエッジを非表示にしておくと、選びやすくなります。このときは、”高度な図形作成ユーティリティー”を一度、閉じないといけないので、若干面倒です。ご利用は計画的に!
また、底面と天面も忘れずに作成してください。
6. 面からシェイプを作る
次に、メニューから”面からシェルへ” を選んで、今、作成したすべての面を選択して、作成を押すと、見た目はあまり変わりませんが、シェルが作成されています。FreeCADでシェルは、中身のない殻のようなデータです。ここで、シェルからソリッドへ変換すれば完成ですが、またシェルが選びにくいので、モデルウィンドウから作成したエッジと面をすべて非表示にしておくのがよいと思います。なんなら、もう要らないので、消してしまってもいいです。
7. シェルからソリッドを作る
次に、メニューから”シェルからソリッドへ”を選んで、今、作成したすべてのシェルを選択して、作成を押すと、見た目はあまり変わりませんが、ソリッドが作成されています。以上
一輪挿しとして機能させるために花を挿すところをつくります。これは、穴の断面形状をスケッチで描いて、さっき作ったソリッドからくり抜きます。
断面形状の例はこちら
断面形状はソリッドからはみ出さなければ何でもよいですが、花が倒れにくいように、口の付近をすぼめてみました。3Dプリンターで造形するときに、ノズル径が0.4mm なので、穴が開かないように、壁の厚さが少なくともノズル径の3倍、1.2mm以上はあったほうがよいと思います。
断面形状ができたら、ぐるっと回転させて、穴の形状が出来上がりますので、外側のソリッドから引き算すると、花を挿す穴のついた一輪挿しのモデルが完成します。
8. スライサーで造形データを作成
モデルが完成したら、ファイル−エクスポート で STL ファイルを出力します。
次に、スライサーを起動します。スライサーは、3Dプリンターを買うとついてくるか、Curaなどのフリーウェアを使います。こちらの3Dプリンター(JGMaker のA3S)では、壁の厚さを0.8mm(0.4mmで2周分)にしたら水漏れしたので、1.2mm (3周分)としました。この辺は、ノズルスピードなどでも変わると思うので、調整が必要かと思います。水漏れと行っても、ダバダバ漏れる感じではなくて、一晩水を入れといたら翌朝には若干減ってたといった程度です。
9.3Dプリンターで出力
スライサーで、各種設定を済ませ、造形データを出力します。造形データはgcode という形式のファイルになります。こちらの3Dプリンターでは、造形データをSDカードにいれて3Dプリンターに入れます。今時は若干珍しいSDカード(いまはマイクロSDカードが多い?)ですが、大きいので、扱いやすいです。
今時の3Dプリンターは、Wifi やLANで接続できるものがあるようですが、SDカードで造形できると、パソコンがなくても3DプリンターとSDカードだけで印刷できるので、同じ形を繰り返し出力するときは便利だと思います。造形データは、数十メガバイト程度なので、ギガバイトクラスの容量があるSDカードなら、たくさんの造形データを置いておけます。フォルダ構造も認識してくれるので、よく使う造形データをフォルダに整理してSDカードに入れておけば、パソコンがなくても作れます。
そんな感じで一輪挿しを作ってみましたが、色が寂しい(寒い)と言われました。
次は黄色とかピンクでも作ってみようと思います・・・需要あるのか?